合鹿(ごうろく)椀を拭きなおす
この合鹿椀を預かったのが2020年9月18日金曜日、出来上がったのは12月26日土曜日。およそ3か月かけて仕上げた。
持ち主に手渡すと、お椀を見る目がキラキラ喜びにあふれていた。私はこの瞬間を感じたいために「おなおし」をしているんだな、と深く思った。うれしい気持ちを共有できることをありがたく思う。
持ち主は「このお椀ではない入れものに汁を注いでも、物足りない感じで。何か違うんですよね〜」と言った。
生活道具は自分の一部になってこそ良品だと言える、と私はおもっているので、まさにこのお椀はそういうものだ。
持ち主の毎日の暮らしにかかせないものになっている。このお椀であれば何を盛ってもさまになるのだという。
思い入れのあるお気に入りを再生できたことをとてもうれしく思う。
|修理前と修理方法
桜材を縦割りにとったお椀。経年使用により拭き漆がはがれている。
内側の底は箸やスプーンでかなり深く削られキズになっている。素材が木だから、どうしても使っておればへこんでくる。
これは長年よく使っていることがわかる符号だね。
写真を使って細かく説明していこう。
汁ものから出る塩分や油脂分を除去する。
砥の粉を水練りしたものを吸い口に塗り乾いたらヘラでゆっくりはずす。
ペーパーヤスリで空研ぎ。
前の塗料やキズ等をとる。深いキズはお椀の形が変形するほどまでとらないように気をつける。
水研ぎは素材の木材が変形してしまうので(暴れるという)してはいけない。
拭き漆4回目。
拭き漆6回目。
ペーパーヤスリ2000番で空研ぎし、やすりカスをきれいにふきとって拭き漆する。
拭き漆8回目を終えたらしっかり固める。
最終仕上げの「呂色磨き」方法で磨いていく。
左手のお椀は磨いたもの。右のお椀はこれから磨く。お椀の中に映るライトがまだ磨いてない右のほうは光がにじんでぼやけた感じ。
にじんでぼやけたライトの光が磨き終えたほうはライトの輪郭がはっきりとしている。
ここで初めて水を使う。
中性洗剤とスポンジで洗う。
洗ったら水切りかごには入れないで、すぐふきんで水気をしっかりふきとる。
拭き漆8回で完成。
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