中田篤氏作品:長皿金継ぎ

「錆漆」仕上げでなおしました。

一般的に錆漆は下地を作る時に用いるものという印象ですが、「錆上蒔絵」や「錆絵」と言う技法があります。

前者は地盛りするために用いるもの、後者は錆独特の芸術的雅さを心情として錆を用いるもの。
「錆絵」は私の好きな江戸時代の小川破笠(はりつ)や明治時代の柴田是真(ぜしん)が応用しています。


この器を見て一瞬で金継ぎ仕上げを錆漆でしようと決めました。
金継ぎ仕上げ方法はお任せと言われたものですから。
陶磁器は生活用具の中では一番アート感を出せる道具だとおもっています。また、使いながら愛でることができるので、自然に自分と一体化してくれます。

そういった器を金継ぎでなおすということは、単なる器の修理にとどまらず、持ち主の心の一部をも癒せたように感じます。これはとてもうれしい体験なのです。

•依頼者:「遊華人倶楽部」店主
•金継ぎ修理品:長皿68センチ〔三重県度会郡玉城町在住の陶芸家中田篤(なかたあつし)氏作〕
•金継ぎ仕上げ:錆*

*錆(さび):砥の粉と水を混ぜた砥の粉泥と生漆を練り合わせたもの。


上の写真は損傷していない方の部分写真です。このように器の表情に作者の意思に任せた自由さがあるので、損傷した欠けの部分も作り込まないように注意した(写真下)。

|修理前と修理方法

皿のふちが1箇所欠けている。破片の一部あり。
「錆漆仕上げ」でなおすことに決定。
地の粉と生漆を蒔いて層にし、破片の足りない部分を成形する。その上に錆漆で仕上げていく。

地の粉と生漆を交互に蒔いて欠損している部分を成形しているところ。地の粉と生漆は欠損部分の深さによって蒔く回数をかえる。
◎下地つくりが一番大切な工程
中田氏の作品は本焼きのあと、漆を塗って低温焼成と3度焼いて完成する手の込んだもの。釉薬だけでは表せないしっとりとした色は漆の成せる技だ。

FIVETREES

ファイブツリーズは三重県の太平洋が美しい伊勢志摩に工房を構えています。金属やべっ甲や漆などさまざまな素材を使用したオリジナルのジュエリー制作と陶磁器を金継ぎで修理そして天然の漆を使って器を中心に修理する金継ぎ塾とワックスを削って細工するジュエリー制作塾を開いています

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