「陰翳礼讃」
「陰翳礼讃」-いんえいらいさん-
谷崎潤一郎が思うところを書いた本。何回も読んだり思い出されたり私にとって刺激のある本のひとつです。
漆工をするようになり、漆を身近に感じれば感じるほど谷崎の言っていることがよくわかります。漆は日本の美を体現している素材であると言っても過言ではないでしょう。
日本の美学は「もののあはれ」、「アシンメトリー」そして「侘び寂び」など、西洋の美学にはみられない価値観で成り立っています。
「金継ぎ」という技術はそういった価値観から生まれました。
だから日本独自なんです。
「金継ぎ」は、はじめは茶道の世界に取り込まれました。日本の礼を尽くす格に「真行草」があります。
道具の格は別としてみても金継ぎされた器はそのどれにもフィットする、無秩序の極みのような存在です。なんといっても、国宝にも金継ぎされた器が君臨しているのですから。
傷を傷とせず、ひとつの意匠としてみる見立ての美学です。私はそういった日本独自の美学が大好きです。
私の「金継ぎ」はほとんどを金で加飾するのではなく最後まで漆で仕上げています。
「漆継ぎ」です。
茶の湯の中で発展してきたものを現代の食卓で取り入れるのですから、食卓をデザインしていく、再構成する必要があるでしょう。「陰翳礼讃」をそのまま現代に当てはめようとしてはかえって白けてしまいます。
ろうそくの明かりから電気の明かりへ。
金ばかりを加飾に使うのではなく色漆を使うことでバラエティーに富んだ生活空間を作ることができます。
|修理前と修理方法
欠けが1点(破片あり)と縦に走っている3本の線は外側にはあらわれていないので貫入、どこかにぶつけたりして損傷したのではなく、窯から出した時の温度変化による釉薬の膨張率からできたもの。よってそのままでもかまわない。
仕上げの加飾は「共直し」技法*に決定。
*「共直し」とは、金継ぎ技法の中のひとつで、元の器の色に寄り添ってなおして目立ちにくくする修理方法。
欠けを修理する
破片を接着後、隙間を生漆と地の粉で蒔き地をする。これを数回繰り返し、隙間が埋まってきたら錆漆をする。写真は余分な錆漆を木賊(とくさ)で削り取っているところ。
余分な錆漆を削って均一にしたところ
焦茶色になっているのは生漆を塗って和紙で抑えて「地固め」を行なった。
錆漆をした後は必ず「地固め」をして表面を強固にすることが大切。
下地をしっかりしておくことが重要!!
この後仕上げの加飾をしていく。
0コメント